憧れのN子ちゃん

人間誰しも憧れの人っているじゃないですか。

CHANELでもニコアンドでも着こなしちゃうし、「同級生を人生のどん底に突き落とす小悪魔」にも「ピンク髪のキャバ嬢霊媒師」にも「大泉洋さんに恋する純粋な女子高生」だにってなれちゃう小松菜奈さんとか、生まれた家系が大金持ちで背が高くて毎日のように有名ブランドのショーに行っててどの写真も大きな口で笑ってる超絶幸せそうな森星さんとかに憧れるのはまあ普通にわかるんだけど、

今回のお話は小さな日本、の中の小さな静岡県、の中の小さな小学校、の中の同級生のある女の子のこと。

今でも忘れない、人生初の完敗宣言のこと。(かんぱ~い!!!)

 

 

小学6年生の春、私は初めてN子ちゃんと同じクラスになった。6年1組、自己主張が強い子が多く楽しいクラスだった。N子ちゃんは読書がすきで絵が上手。この情報だけだと大人しい子っぽいけど、ちょいと待って早まらないで、彼女は口もお達者なのだ。

 

授業風景を思い出すと、どの授業でも彼女が議論の先頭にいた。誰の銃弾も当たらなかった、絵本とクラウドファンディングについて語っているキンコン西野さんくらい無敵だった。同い年とは思えないような視点を持っていて、私たちの2周り先をいっていた。それに自分の意見を主張するのに一切の遠慮がなかった。

それなりに意見はあるくせに、躓くのが怖くていまいち図々しくなれなかった12歳のわたしは、「それはこういう点で違うと思います。」とクラスメイトと正面切ってバトってる彼女を、いっつも口を開けて見ているだけだった。

 

毎時間まみえる彼女の意見表明をする姿は、飄々としていて、かっこよかった。

12歳のガキが醸し出せるレベルでは無い冷静さと、堂々とした態度に惚れ惚れしていた正真正銘クソガキのわたしは、

「N子ちゃんは将来総理大臣になるのでは?!」と本気で思っていた。お馬鹿だ。

 

 

そんなN子ちゃんのことを私はすぐ好きになった。ファンになった。正直言って推していた。他の同級生とは確実に違う目で見ていた。

休み時間はなるべく話しかけにいった。彼女の思考回路や生態を知りたかったのだと思う。その延長線で「N子ちゃんのおうちで遊びたい」とお願いしたことがある。

小学生だということを考慮しても、クロちゃんのツイートの語尾の次の次くらいに気持ちが悪い。

 

N子ちゃんの答えは

「今日はお母さんのガーデニングをお手伝いする約束をしてるから、それを一緒にしてくれるならいいよ!」

だった。三戸なつめの前髪級に斬新な回答に、どうぶつの森でしかガーデニングをしたことが無かった私は、鳩豆状態だった。新しいジャンルの”遊び”に律儀に戸惑いつつ、結局言われるがまま土だったか石だったかを運んだような、そんな記憶がある。

 

 

ここまでで十分すぎるくらい憧れる要素がN子ちゃんに満載なのは言われなくても筆者の私が一番わかっているのだが、どうしても私の脳裏から離れない彼女のひとことを、なんの汚れも嫌味も疑いもない彼女のひとことを、是非とも紹介したい。

 

いきなりだが小6の頃の私は特技=勉強で、爆笑レッドカーペット・イロモネア・エンタの神様などの何も頭を使わなくていい最高の時間をくれるテレビ番組と負けず劣らずテストが好きだった。吐き気。

 

それでも、あの噂のN子ちゃんには全然勝てなかった。

正確に言うと点数では幾度も勝っていたかもしれないが、授業中の議論って観点でみて、比べるどころか同じ土俵にすら立てなかった。まあクラス全員が彼女に置いてかれてたんだけど、12歳ながらに「大切なことはテストの点などではない」と悟っていたのかも。案外賢いじゃんクソガキわたし。

 

でね、一度だけN子ちゃんに聞いてみたの、「なんでそんなに頭がいいの?」って。

私はてっきり素晴らしい勉強法とかテキストとか教えてくれると思ってたの。

そしたらさ、にこっとしながらこういったんだよね

 

「特にないけど、あえて言うなら夜8時に寝てるからかなあ?」って…

「ん???????もう一回言って?」

「別に頭いいと思ってないけど、たくさん寝るのはおすすめだよっ」って。

 

今考えるとこれが人生初の”すべてが崩れ落ちる”体験だった。バカ真面目ちゃんな私は斜め上の返答に笑うしかなかったし一瞬時止まったもん。

「あーーーーこの人には勝てないな」

そう思ってから無駄に比べるのをやめた、ら良かったんだけど

やめられなかったあたりめちゃん中学生ver。勝手に憧れるのは自由だけど比較とかしてもキリがないって気づいていない14歳のわたし、お疲れ。

長いからここで今日はおわり